「解っただろう。『多数派の意見に従う』のが正当化できるのは、あくまでp>0.5、かつ、個々の投票者が結託していない場合だけだ。投票者ひとりひとりが、私利私欲や虚構にとらわれることなく、正しい知識を基に真剣に考えて正しい答えに近づき、他人や私情に流されず自分自身の理性で投票したときだけなんだ。
どうも、ゴマ(@gomago_gomago)です。
今回は市川憂人さんの『神とさざなみの密室』を紹介します。
読む機会を逃してずっと文庫化するのを待っていたのですが、とうとう文庫化されたので早速読み終えました!
『神とさざなみの密室』あらすじ
ここはどこ!? 女子大生の凛は記憶を辿るが、何も思い出せない。暗い部屋で、両手首を頭上で縛られている。一体誰がこんなことを。恐怖に駆られる凛の前に、突然見知らぬ男が現れる。両者の間に横たわる、顔を焼かれた死体――。破局のタイムリミットが近づく中、対立する政治団体の男女を、疑惑と憎悪、密室と死体の謎が翻弄する。本格ミステリ新世代の旗手による究極の密室監禁サスペンス。
新潮社より
『神とさざなみの密室』感想
市川憂人さんの作品というと、「マリア&漣シリーズ」のような特殊設定ミステリが思い浮かびますが、今作はそのような特殊設定はありません。
他のミステリ作品に比べてちょっと特殊だなと感じるのは、政治の話が出てくることでしょう。
政治家ではなく政治団体、それも対立する2つの政治団体にスポットが当たるのはミステリでは珍しいのではないでしょうか。
ここまで右翼や左翼という言葉が出てくるミステリも珍しいと思います。
私が読んでる作品が偏っているだけかもしれないので、他にもそういう作品があれば教えてほしいです。
目を覚ました主人公・凛は閉じ込められる前の記憶をなくしており、目の前には顔の焼かれた死体、そして対立する政治団体の男・大輝。
カギとなるのは「一体、誰が何のためにこんなことをしたのか」
少ないヒントを頼りに解決の糸口を見つけていきます。
詳しく書こうとするとどれもネタバレになってしまうので書けませんが、記憶をなくすまでの出来事はまさかの展開でした。
「マリア&漣シリーズ」や『断罪のネバーモア』に比べると、主要な登場人物2人のキャラクター性は薄く感じてしまいますが、物語はとても面白かったです。
ただ個人的には最後の展開が駆け足で、あっという間に終わってしまったなあと感じました。
事件が解決して残りのページ数からもう一山あるかなと思いましたが、そうではなかったのでそれもちょっと残念…。
他のシリーズに比べるとやや物足りなさを感じてしまいましたが、それでも十二分に面白かったです。
本日はここまで。
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