【書評・感想】『君のクイズ』小川哲

ゴマの読書記録

クイズに答えているとき、自分という金網を使って、世界をすくいあげているような気分になることがある。僕たちが生きるということは、金網を大きく、目を細かくしていくことだ。今まで気づかなかった世界の豊かさに気がつくようになり、僕たちは戦慄する。戦慄の数が、クイズの強さになる。

どうも、ゴマ(@gomago50gomago)です。
今回は小川哲先生の『君のクイズ』を紹介します。

2023年本屋大賞の候補作にも選ばれている本作。
クイズプレーヤーの凄さが小説という形で面白く描かれています。

『君のクイズ』あらすじ

生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。
読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される! 
「不可能犯罪」を解く一気読み必至の卓抜したミステリーにして、エモーショナルなのに知的興奮に満ちた超エンターテインメント!

朝日新聞出版より

『君のクイズ』感想

まずそもそもの大前提として、私はクイズが好きです。

QuizKnockの動画は初期から全部見てますし、みんはやでS2ランクに行けるくらいにはやりこんでいた時期もあります。
 ※QuizKnock…東大発の知識集団。クイズを題材とするWebメディア。Youtuberとしても活動。
 ※みんはや…「みんなで早押しクイズ」の略。オンラインで早押しクイズ対戦が出来るアプリ。

クイズをテーマにしたミステリ、と言われて興味がないわけがありません。
普段は文庫化した作品しか購入しない私でしたが、久々に文庫化していない作品を購入しました。

さて、物語のテーマはクイズですが、その中でも早押しクイズにスポットが当てられています。
小説ではありますが、クイズプレーヤーの思考・戦略が分かりやすく描かれているのが本作の特徴です。
作者の小川哲先生もQuizKnock・伊沢氏の『クイズ思考の解体』を参考に書かれているので、クイズプレーヤーがどのように考え、視聴者がまだ何もわからないような状況から答えが出せるのかの理屈が小説の中に落とし込まれています。

例えば、「読ませ押し」
クイズの問題文は「ここまで読まれれば答えを1つに絞れる」という確定ポイントが存在します。
この確定ポイントが「読まれたから押す」のではなく、「読まれそうだから押す」。
ボタンを押してから問題が止まるまでのわずかの差を利用したのが「読ませ押し」です。

こうしたクイズプレーヤーの思考やテクニックが、小説という形で描かれています。

肝心のストーリーについてですが、本作はミステリの要素を併せ持っています。
優勝が懸かる大一番、問題が1文字も読まれない中で正解を導き出した対戦相手。
誰もが不正を疑う中、主人公・三島がその真相に迫ります。
対戦相手の過去、自分の過去、それらを紐解きながら辿り着いた正解とは―――。

個人的な感想とすれば、ストーリーはとても分かりやすく面白かったです。
ただ0文字で正解を導きだした真相についてはちょっと無理があるのではないかと思いました。
ストーリーの中でその部分に言及している箇所もありますし、密室のトリックなどと違って「そういうこともあるか」とは言えてしまうと思いますが……。

分かりやすいだけでなく、物語自体がそれほど長くないので、一気読みのしやすい作品です。
クイズに興味がある人も、そうでない人も楽しめるであろう作品でした。

終わりに

ということで、本日は小川哲先生の『君のクイズ』を紹介しました。
2023年本屋大賞候補作の1つで、クイズの面白さ・クイズプレーヤーの凄さが小説に落とし込まれた作品でした。

本日はここまで。
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