ミステリ初心者にもおススメ!<マリア&漣>シリーズ(市川憂人)

ゴマの読書記録

どうも、ゴマ(@gomago50gomago)です。
今回は市川憂人さんの<マリア&漣>シリーズを紹介します。

<マリア&漣>シリーズはミステリ初心者にとっても読みやすい内容になっています。
ミステリを読みたいけど何を読んだらいいかわからないという人は、こちらの<マリア&漣>シリーズはいかがでしょうか。

<マリア&漣>シリーズとは

<マリア&漣>シリーズは市川憂人さんが書く本格ミステリです。
2016年10月に1作目の『ジェリーフィッシュが凍らない』が発売され、2023年2月時点で以下の4作が刊行されています。

  • 『ジェリーフィッシュは凍らない』
  • 『ブルーローズは眠らない』
  • 『グラスバードは還らない』
  • 『ボーンヤードは語らない』

タイトルが全て『○○は××ない』で統一されてるゴマ!

1作目の『ジェリーフィッシュは凍らない』は第26回鮎川哲也賞を受賞しています。
21世紀の『そして誰もいなくなった』と評されているところからも、この作品の評価の高さが伺えます。

私もその謳い文句に心を奪われた1人です。

<マリア&漣>シリーズの舞台

<マリア&漣>シリーズの舞台は1980年代のアメリカ。
(ただし、作品の中ではU国と表記されています。)

そしてこの作品の最も大きな特徴は近未来的なテクノロジーが登場することです。

過去の話なのに、近未来ゴマ……?

現代にはないテクノロジーがたくさん出てくるんです!

例えば、1作目の『ジェリーフィッシュは凍らない』では「ジェリーフィッシュ」と呼ばれる特殊技術が使われた航空機が登場します。
2作目の『ブルーローズは眠らない』でも実現不可能と言われていた青いバラ、3作目の『グラスバードは還らない』では透過率を変えられるガラスが登場します。
いずれも物語の中で重大な役割を担っているのです。

理系っぽい話が出てきますが、わからなくても全く問題ないです!

<マリア&漣>シリーズの登場人物

<マリア&漣>シリーズの主要な登場人物は、(当然ですが)マリアと漣。

マリアことマリア・ソールズベリーは見た目は赤髪の美人。
性格はかなりズボラで、突拍子のないことを言いだすこともしばしば。

対する漣こと九条漣は冷静沈着。
マリアをたしなめるのが彼の役割です。

対照的な2人ではありますが、これが<マリア&漣>シリーズの魅力でもあります。

<マリア&漣>シリーズを初心者におススメしたい理由

私が<マリア&漣>シリーズを初心者におススメしたい理由は、ずばり本格ミステリでありながらポップな展開があり読みやすいことです。
その理由は何といっても、マリアと漣という対照的な性格の2人。
2人の掛け合いはまるで漫才かと思わされるようで、事件の陰鬱な雰囲気を和らげてくれます。

例えば、マリアの初登場シーン。

『何よ、まだ7時半じゃない。寝かせてよもう……』
「大抵の人間はとうに自宅を出ていますよ。この時間まで惰眠を貪ろうとは大層なご身分ですね。数十年ぶりに大学へ再入学されたらいかがですか。」
『あたしはそんな年増じゃないわよっ』

『ジェリーフィッシュは凍らない』本文より

しょっぱなから掛け合いでスタート。
このようなやり取りがことあるごとに登場します。

ミステリは暗くなる展開も多く、読んでるとだんだん気分が滅入ってくるような作品もあります。

グロテスクなシーンが多い作品や、いわゆる「イヤミス」と呼ばれる作品などがこれに該当します。

ハラハラドキドキの緊迫感あるシーンも多いですが、マリアと漣のこうしたやり取りがあるので良い意味で緩急がついています。
このクスっと笑えるシーンが多いのが、ミステリ初心者におススメしたい理由です。

あらすじと感想

『ジェリーフィッシュは凍らない』

特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者である、ファイファー教授たち技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところがその最中に、メンバーの1人が変死。さらに、試験機が雪山に不時着してしまう。脱出不可能という状況下、次々と犠牲者が……。第26回鮎川哲也賞受賞作。

<マリア&漣>シリーズ1作目は『ジェリーフィッシュは凍らない』
第26回鮎川哲也賞を受賞しており、21世紀版『そして誰もいなくなった』と評された作品です。

この作品のテーマとなるのが、特殊技術を用いて製造された航空機「ジェリーフィッシュ」。
飛行中のジェリーフィッシュの中で開発メンバーの1人が殺され、雪山に不時着した先でも更なる犠牲者が……。

本作は事件発生時のジェリーフィッシュ内の様子と事件発生後のマリアと漣の様子が交互に描かれます。
1人、また1人と犠牲になっていくジェリーフィッシュ内の様子は常にハラハラドキドキ。
一方でマリアと漣は、マリアが突っ走り漣がそれをいさめながら少しずつ真相に近づいていきます。

真相は驚きの一言。ラストシーンは一気読みしてしまいました。

『ブルーローズは眠らない』

ジェリーフィッシュ事件後、閑職に回されたフラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣。ふたりは不可能と言われた青いバラを同時期に作出したという、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することに。ところが両者と面談したのち、施錠されバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で、切断された首が見つかり……。『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!

<マリア&漣>シリーズ2作目は『ブルーローズは眠らない』

本作でテーマとなるのは、実現不可能と言われた青いバラ。
実際に現代でもバイオテクノロジーの進歩によって誕生した青いバラですが、それがもう少し前の時代に実現したという設定です。

『ブルーローズは眠らない』は現代と過去、2つの視点で物語が進みます。
現代と過去のつながりが示唆されながら話は進むのですが、読んでいるとどうにも「あれ……?」と思う部分が出てきます。
読み進めていくとその謎が解けるのですが、それは読んでからのお楽しみということで。

『グラスバードは還らない』

大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、顧客に不動産王ヒューがいるという情報を掴んだマリアと漣。2人は彼の邸宅のある高層ビルを訪れるが、そこで爆破テロに巻き込まれてしまう! 同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の関係者らが、窓のない迷宮に軟禁されていた。ヒューからの不気味な伝言に怯えて過ごしていると、突然壁が透明に変わり、血溜まりに横たわる男の姿が!?

<マリア&漣>シリーズ3作目は『グラスバードは還らない』

本作でテーマになるのは硝子鳥(グラスバード)と透過率を自在に変えられるガラス。
ガラス製造会社の関係者4人は迷宮に閉じ込められ、そこで殺人事件が発生します。

クローズドサークル内での連続殺人、と『ジェリーフィッシュは凍らない』に近いものがありますね。

トリックは正直「ズルくないか…?」と思ってしまいましたが、『グラスバードは還らない』は何よりストーリーが面白いです。
事件の真相と硝子鳥に秘められた真実が明らかになった時、心に来るものがありました。

『ボーンヤードは語らない』

U国A州の空軍基地にある『飛行機の墓場(ボーンヤード)』で、兵士の変死体が発見された。謎めいた死の状況、浮かび上がる軍用機部品の横流し疑惑。空軍少佐のジョンは、士官候補生時代のある心残りから、フラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣へ非公式に事件解決への協力を依頼する。実は引き受けたマリアたちの胸中にも、それぞれの過去――若き日に対峙した事件への、苦い後悔があった。
高校生の漣が遭遇した、雪密室の殺人。ハイスクール時代のマリアが挑んだ、雨の夜の墜落事件の謎。そして、過去の後悔から刑事となったマリアと漣がバディを組んだ、“始まりの事件”とは? 大人気シリーズ第四弾は、主要キャラクターたちの過去を描いた初の短編集!

<マリア&漣>シリーズ4作目は『ボーンヤードは語らない』
本作は他の3作と異なり、シリーズ初の短編集で以下の4作が収録されています。

  • ボーンヤードは語らない
  • 赤鉛筆は要らない
  • レッドデビルは知らない
  • スケープシープは笑わない

『ボーンヤードは語らない』の注目すべきポイントはマリアと漣の過去の物語、そしてマリアと漣が初めてバディを組んだ時の話が描かれていることです。

ファンにはたまらない内容ゴマ!

2人の過去が描かれているからこそ、2人が初めてバディを組んだ時の話に2人の想いが交錯していることが分かります。

どの作品も最後はちょっと切なくなる、そんな話が4作収録された短編集でした。

まとめ

ということで、本日は市川憂人さんの<マリア&漣>シリーズを紹介しました。
いずれの作品も楽しく読めて最後にちょっぴり切なくなる、そんな4作です。

どの作品も1話完結型なのでどれから読んでも問題ありませんが、私としては1作目の『ジェリーフィッシュは凍らない』から読むのがおススメです。
この作品で<マリア&漣>シリーズの世界観も理解できます。

本日はここまで。
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